2008年7月5日土曜日

データベース的時代における工学的帝国化

うう、、長文書いたら消えてしまった。。。よって覚えている範囲のみはしょって。

Tumblrで、「フリーズする脳―思考が止まる、言葉に詰まる - 情報考学 Passion For The Future」を紹介しましたが、以前に池田信夫blogで、"Is Google making us stupid?"という記事が紹介されていたのを思い出しました。

グーグルでバカになる?

いずれもインターネット時代のデジタル化が人間の記憶や思考に影響(それもマイナスの)を与えているのではないかという指摘です。

まず、デジタルで読んだり書いたりすることに比べての本を読むことやノートに書くことについては「読み書きインタフェース」で少し書きました。

また、"ググりバカ"については「Googleが奪う本質を考える力に膝を打つ」に書きました。

今回はそれ以外のもう少し幅の広い話について。

インターネット時代、情報の摂取は非常に広範囲かつ容易になりました。今までは眼に留まることのなかったようなマニアックな情報まで入手可能です。その反面、一定のパターンの情報のみが、つまりは人気のある情報ばかりが大量に消費されるようになっていることも事実です。
インターネットでは通常、Googleなど検索エンジンやニュース・アグリゲータなどなんらかのサービスを経由して情報を取得することが増えたわけですが、そこでの情報は、一定のアルゴリズムで優先順位を処理されたもので、多くの場合SEOされたか人気の高いものになります。こうしたものに群がることが増えたため、より本質的で深い記事が埋もれてしまうことも起こりえる状況になってきています。

また、ネット上にある記事は断片的で、リンクで次々飛んでいくように読むことが多いため、じっくり文脈をふまえての情報の読み取りにはなりにくいです。

かつて、 東浩紀さんが『動物化するポストモダン』で「データベース的」という概念を提示しました。当時は、IT分野に身を置く人間からみてその用語の使われ方や図解に違和感があり,真剣に読んでませんでしたが、今となっては東さんとは少し違った意味で「データベース的」な時代になってきていると言えるのではないかと考えています。

 東浩紀さんの『動物化するポストモダン』については、
2003年6月26日(木)多文化ゼミ
宮台・東対談 〜『動物化するポストモダン』を読む〜

東さんの「データベース」概念は、ボードリヤールのシミュラークル論への対概念として提示されました。

自分の考える「データベース」というものは、工学的に情報を断片化し、アクセスしやすくする情報とともに格納した情報源というような意味で、もっぱらそのような情報源からのみ情報を取得するような状況を「データベース的」と考えています。
必ずしもシミュラークルと対になりません。 すぐ後に述べるとおり、「歴史」などと対になります。

本を読むことが主要な情報源だった時代、本を読むことはすなわち、本の論理展開の文脈と、自分の思考の文脈と、本の向こう側の著者の思考の文脈が交差しながら情報を取得することでした。それぞれの文脈は大きな物語を成し、他の物語と接続されていきます。それら物語の集合は歴史となり,伝統となっていきます。
対立する文脈と遭遇すると、それはイデオロギー闘争となり、しばしば社会的対立にもなりました。そうして歴史も動いていきました。

一方でインターネットが情報源の時代、工学的に処理され、大きな物語という文脈からは切り離された情報を取得していくことになります。その情報は一定のアルゴリズム処理や統計処理によって意味論的文脈からは切り出されて提供されます。したがって、大きな物語と接続されませんし、イデオロギー闘争にもなりません。
人々が工学的に処理され抽出された情報に従属し,それを垂れ流し反応し消費するだけになると、東さんの言うように「動物化」された社会となるでしょう。実際にその傾向も強いです。
方や、たまに大きな物語と接続されると、大きな論争となります(炎上)。 といっても論争程度ですが。

メディアの変遷と関連してまとめてみると、

  • 文字を保管するものが無かった時代…口頭伝承による社会化
  • 紙はあるが印刷が無かった時代…知識の抽象化と知識の独占による帝国化
  • 印刷されるがデータベース化されていない時代…知識の大衆化と知識の物語(イデオロギー)化
  • データベース的時代…知識の断片化と工学的帝国化
のようになるのではないかと考えています。

20世紀までは、知識を物語と接続することで、大衆をも巻き込んだ国家闘争が繰り広げられていたのですが、インターネット時代では知識はデータベース化され、情報の工学を支配するものがそのバーチャルな帝国を作り上げていくのではないでしょうか。

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