2008年5月21日水曜日

読み書きインタフェース

ITPro:ITの負の影響から社会を守る“情報化会計”の提案(前編)

増岡さんの言いたいことの全体の趣旨からするとどうでもいいことなのですが。

キーボード入力は文字を書くことよりも精神的営みの活性化が弱いというような指摘がありました。

この記事で書かれている通り、読むことと書くことは文化的にも教育上も非常に重要だと思います。

ただ、ITでも読めるし書くことができます。
ITが読み書きに直接影響しているのはインタフェースのみで、読むこと書くことという行為自体は変わりません。

記事では,

「『雨が降る』と書きたいにもかかわらず,手が『amegafuru』や『アメガフル』と打たねばならない分裂は、手の動きと思考との間にずれを生む」
と石川九楊さんの文章が引用されています。引用文しか読んでいないので真意はよくわかりませんが、この文章だけだと誤認があるように思います。というのも、手の動きと思考との間にずれを生むのは、鉛筆やペンで文字を書くときも同じだからです。

むしろ、「アメガフル」と書いた方が、頭の中で文字を読み上げているとすると手の動きとのずれが小さくなります。「アメガフル」と頭の中で文を組み立てておいて、それを「雨が降る」と頭で文字に変換して書くことの方がずれが大きいでしょう。amegafuruもあわせて一般的に表音文字の方がずれが少ないと思います。(それでもずれがあるというのがオングらの指摘だと思いますが)

その後に引用されているW・J・オングの『声の文化と文字の文化』でも文字の重要性は指摘されていますが、筆なのかキーボードなのかについては指摘はあったでしょうか?抽象的思考にとっては、声と文字にずれがあることが重要で、そのずれによって即物的声ではなく、抽象的思考が可能になるのだという認識です。

ただ、たしかに入出力インタフェースが変わることで、人間の思考になんらかの影響を与えているとは思います。

自分が感じるのは、インタフェースがキーボードとディスプレイになると、情報が軽薄になるということです。というのも、読むときは指先のちょっとした動きで文字を流していくことができますし、文章の途中でも(リンクなどで)あっちこっちに飛んでいきがちです。また、書くときもとりあえず書き出してコピー&ペーストで後から組み替えていけるからです。これはよい面もあって大量の情報をさばきやすいです。調査するときなどや軽く情報をメモするには非常に役立ちます。

他方で、たしかに人生の中には、こうした高速の情報処理ばかりではなくじっくりと長文に取り組む(読み書く)ことも重要だと個人的には思います。大きな論理の展開の中でこそわかってくるものや感じることもあります。その場合は、たしかに、キーボードとディスプレイではなく、紙とペンの方がよいです。

けっきょく結論としてはおそらく同じようなものになると思うのですが(ネットもいいが紙とペンもね、という)、声と文字のずれがキーボードの方が大きいというのはちょっと違うと思うので書いておきました。

4 コメント:

m さんのコメント...

「書き」はともかくとして「読み」はディスプレイよりも紙の方が情報が深く読み取れるというのは僕もそう思います。自分の文章の校正も印刷しないと間違いに気づかなかったりするし、ディスプレイでは長文を読む気がおこらない。ITというよりは単にメディアの特性(解像度とか一覧性とかレイアウトとか)の問題なのかもしれませんが。あるいは単に慣れの問題か。本文の趣旨とずれてますね、すみません。

つい最近、ペンタブレットを買ってたまに使ってるのですが(基本的には画像系で)、もし手書き文字認識率が100%に限りなく近づいたら、「書き」についてはITとペンのいいとこ取りができるかもしれないですね。という風に議論を発展させたらどうでしょうか。

ちなみに、
>じっくりと長文に取り組む(読み書く)ことも重要・・・その場合は、・・・紙とペンの方がよいです。
と言いつつ、長文を書く時はさすがにもうペンじゃなくてキーボードじゃないですか?(笑)

qog さんのコメント...

ご指摘の一覧性とかの他に、ディスプレイだと姿勢が固定されて長時間きついというのもあるかも!?ね。本だと物理的に重いこともあってつねにいろんな体勢で読むことになりますが。

自分が長文を書くときはさすがにキーボードですが、教育的過程において、ペンで書くことも重要じゃないかとちょっと思いました。頭の中でいろいろと整理して文を組み立てなければいけないので、キーボードで書くときと違う効果がありそうだなぁ、と。

コメント読んでてちょっと思いましたが、「読み」は、局所的には(数文章〜数頁)シリアルにならざるをえないので、あとはどれだけシリアル処理のスピードをあげられるか(一覧性)と楽にできるか(姿勢?)なのかなぁ、と。対して「書き」は、(脳内論理)構造のシリアル化なのでシリアルにしか書けないペンよりもITの方がずっといいのかも。ペンタブレットも含めて。

タブレットいいですね。でも、自分には使い道ないか(笑)。自分が使っている

ちなみに、一覧性に関連して、iMacを使いだしてから画面が大きいので断然文章が読みやすくなった気がします。

m さんのコメント...

書きに関して、キーボードの入力の過程を視覚化するTypeTraceというソフトウェアが紹介されている記事を読んだのを思い出しました。
http://nobi.cocolog-nifty.com/nobilog2/2007/01/typetrace_3c11.html

個人的にはそれほど感銘は受けなかったのですが、一つの試みとしては面白いと思います。qog氏の内容とあまり関係ない気もしますが、思考の視覚化という意味で、ペンと普通のキーボード入力の中間に位置づけられるかもしれません。

qog さんのコメント...

思考の視覚化にいいかもしれませんね。でも、ほんとうは、キーボードにタイプする直前の思考の動きが知りたいところのようにも思えますが。

さらに脱線になりますが、TechCrunchに次世代UIの話が出ていました。
http://jp.techcrunch.com/archives/20080529multi-touch-the-musical-or-the-next-wave-for-ui/

 
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