「ダビング10」が一時凍結、情報通信審議会で事実上決定
ITPro:「関係者で合意が得られ次第,日時確定」,Dpaが「ダビング10」の準備状況を発表
というわけで、2008年6月2日に予定されていたダビング10が見送られることになりそうです。
この問題は、JASRACなどの著作権者団体が私的録音録画補償金の対象機器を拡大しようとする思惑と、電機メーカの業界団体である電子情報技術産業協会(JEITA)が補償金の上乗せで機器が高くなることを避けようという思惑の対立から、文化庁審議会での議論が錯綜していることによるものです。
私的録音録画補償金とは、録音録画メディアの販売価格に著作権料を上乗せすることで著作権者に利益を還元する仕組みで、今回ハードディスクレコーダなどもその対象になりつつあります。
JEITA側が補償金に反対する根拠として、ダビング10で著作物が保護されているうえに補償金まで徴収するのは著作権料の二重取りになるとしています。そのために、補償金とは直接関係のないダビング10の導入が頓挫してしまいそうになっています。
ITMedia:「JEITAの対応、憤り禁じ得ない」と権利者団体 私的録音録画補償金問題で
ただし、著作権者団体側も、将来的な補償金廃止には言及しています。
Tech-ON:【続報】「補償金廃止へ明確に舵を切った点を評価してほしい」,私的録音録画補償金制度で文化庁の担当官
個人的には、今まで書いてきている通り、著作権者への利益還元のためには、極端ですが、
- DRMと著作権申請管理DBで利益を得たい著作物を個別に管理する
- 著作物はオープンにして税金のようなかたちで著作者への還元利益を確保する
自分としては、2つ目の方が、デジタルでオープンなコンテンツ活用のためには有効な気がするのですが、なぜかネット業界で反対が多い気がします。(彼らは著作物はすべて無料にしろとでも言いたいのでしょうか)
その意味では、税金ではないけれども補償金と有料放送の視聴料という二重取りを批判しているJEITAの主張はまっとうであり、支持できるものではあります。ただし、JEITAとしてはあくまで補償金に反対なのでしょうが。
なお、そもそもどうしてダビング10のようなものが登場してきたのかについては、
池田信夫blog:B-CASは独禁法違反である
に、その裏話が出ています。たしかに、最近地デジ対応テレビを買って初めて知ったのですが、B-CASってなんなんだ?と思いました。
他方で、知財本部では、デジタル・ネット時代における知財制度専門調査会がまっとうな著作権(知財)の議論がされていると紹介されています。
無名の一知財政策ウォッチャーの独言:第93回:知財本部・知財規制緩和調査会の資料の紹介
上に書いた通り、個人的には税金的に補償金をとって著作権者に還元する仕組みは悪くないと思うのですが、どうもこれに素直に賛同できない理由に、文化庁と著作権者団体の下心が見えているということがあります。メーカは消費者と向き合って競争していますが、文化庁と著作権者団体は競争もしていないし、そもそも消費者の方をいっさい向いていません。
池田信夫blog:総務省の首を絞める文化庁
無名の一知財政策ウォッチャーの独言:第94回:B-CASと独禁法、ダビング10の泥沼の果て
などを読んでも(あるいはそれ以外の情報でも)、文化庁が一部の著作権者団体の既得権益を守ることに必死なのと天下り利権べったりなのが伺い知れます。本来の著作権者の主張ともほど遠いように思えます。これには、総務省のみならず、経産省も公取委も内閣府(知的財産戦略本部)もみんな不満を募らせていると書かれています(JASRACへの公取の調査もそのためではないかという話も)。
いずれにせよ、著作権者と消費者がおきざりになって、業界団体同士でもめているこの状況は見ていてもあまり気持ちのよいものではありません。
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