2006年12月19日火曜日

インターネット・ニュースにおける信用度の問題

「集約機能の精度の問題」というエントリで、ソーシャル・ニュース・サイトdiggに虚偽の情報が掲載されたというメディア・パブの記事を紹介しました。

これに類似した行為は一度きりのようなものではなく、マーケティング目的で継続的に行われているようです。
すなわち、広告目的で特定サイトへのアクセスを誘導するために、報酬を支払うなどしてdiggの投票を促すような組織が存在するようです。

CNET:Diggへの「やらせ投稿」問題--ついに証拠が浮上?(「天敵」が追求中)

CNET:ランキングをめぐるもう1つの戦い--急成長したdiggを狙う情報操作

無記名の人気投票がなんらかのメリットを生み出す場合、このような情報操作は必ず現れてくるでしょう。SEO(Search Engine Optimization)以上のものとして。
とくに集計が機械的なものの場合、その裏を書くやり方が出てくることは容易に想像できます。

そのような例は有名企業などでも起こりえます。
Engadget:ソニーまたヤラセ:PSP絶賛の偽「ファンサイト」で炎上
JCASTニュース:NHKに取り上げられた 女子大生のブログ炎上


民主主義の仕組みに乗っ取れば、このような虚偽の情報も長期的には淘汰されていくはずです。が、ニュースというようなある特定の時点での露出度を競うような場合には、直接民主主義はその効果を発揮しきれないのではないでしょうか。
つまりは、悪用されやすいのではないでしょうか。


nikkei BPnet:オーマイニュース(韓国):Web2.0の先駆け

オーマイニュースであれば、記者が登録制であるために、虚偽のニュースを掲載すればその記者の信用度が下がるという意味で、誰でも投票できるdiggのようなソーシャル・ニュース・サイトよりもニュースというメディアにとってより適しているように思えます。
が、韓国では発展したものの、日本では苦戦しています。

上のリンク先では、日本ではすでにブログが発達していたためとしていますが、それだけが原因でしょうか。

たとえば、kizashi.jpのようなブログ頻出語の傾向を見るサイトでは、既存ニュースに対するリンクが圧倒的に多いことが見受けられます。
つまり、日本の大多数のブログは、既存メディアで話題になったことを引用して自分のブログでも話題にしているのです。

まだまだ既存メディアの影響度が大きいのかもしれません。
あるいは、日本では、単純にオーマイニュースの認知度が低いためかもしれません。

また、オーマイニュース上では、ニュースの書き方についてしばしば炎上しているようです。これは、日本での市民ジャーナリズム発展のために通るべき茨の道ととるか、日本では受け入れられていない現象ととるか、どちらでしょうか。現時点ではなんとも言えませんが。


ところで、資本主義の市場においても虚偽の情報を流すことが可能です。
実際、これによって大きな利益を得たりする企業や個人もいるでしょう。
ところが、そうした企業や個人は、まず事前の監査によって虚偽の情報が流れるのを防ぎ、さらに事後的にも査察により虚偽が暴かれることで罰を受けます。

自由市場が、自由なものとして成り立つためには、参加者の信用度というものが問題になります。
長期的取引が成り立つような市場であれば、虚偽により信用を失うことが長期的利益に反する行為になります。そのような市場では、自然と誠実さが追い求められることになるでしょう。
自発的誠実さ以外にも、監視や罰則などで信用度を裏付ける仕組みなどがあることによってはじめて自由市場が成り立つと思います。

良い場合で蚤の市、悪い場合で詐欺市場を、自由市場とは呼ばないでしょう。ある種の参加者の公平性や信用のようなものがないと、自由は成り立たないからです。自由と好き勝手は異なる次元のものです。

自由な取引を成り立たせるためには、信用を生み出す長期的な取引、もしくは監視と罰則の仕組みが必要となってくるわけです。そして、そのような長期的取引や監視/罰則を可能とするのは、取引主体の自己同一性(前回と同じ人であること)が大前提です。

インターネットの世界においても、長期的な関係性がなりたつような仕組みがあれば、虚偽を働くことは自分にとっての不利益となるために発生頻度は抑えられると考えられます。そのための仕組みとして、オーマイニュースやブログ・ネットワークのような登録制のニュース配信の仕組みが考えられます。
本名や個人情報を公開するかどうかは別として、同一ハンドルネームでアイデンティティが維持されれば、こうした信用と責任の仕組みはある程度実現可能でしょう。

このようなアイデンティティを前提にしない、完全匿名の仕組みで信用を得るためには、民主主義的投票はたしかに有効な手段です。が、投票者の独立性が維持されないと難しく、また、長期的/広範囲には淘汰されるとしても短期的には情報操作がある程度可能となってしまうという問題点があります。

diggのようなより自由度の高いソーシャル・ネットワークでは、こうした短期的情報操作にどう対向していくかが大きな問題となるでしょう。その解決策は具体的にはまだ見えてないように思えます。

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