2006年12月8日金曜日

2つのイノベーション:インクリメンタル型とアーキテクチャル型

イノベーションについて。

NBonline 宮田秀明の「経営の設計学」:ダ・ヴィンチの飛行機に足りなかったもの〜“ビジョン”を“コンセプト”に変える難しさ

イノベーションには、インクリメンタル型とアーキテクチャル型という2つのタイプがあるということです。すなわち、継続して改良を積み重ね漸進的な技術革新が起こるインクリメンタル型のイノベーションと、大きな断絶を伴う技術革新であるアーキテクチャル型のイノベーション。

アーキテクチャル型のイノベーションを起こすには、ビジョンを描きそれを具現化するコンセプト(新しい考え方)およびモデルを作らなければいけないが、そこが非常に難しいとされています。
レオナルド・ダ・ヴィンチのような天才でさえ、空を飛ぶというビジョンに対して描いたコンセプトは間違っていた、と。
そうしたイノベーションは、つぎ込んだ研究開発費と成果の相関は著しく低い、また、現場主導ではなくトップダウンのマネジメントでないとうまくいかない、とも指摘されています。

また別の観点から。

池田信夫blog:「ユーザー主導」の落とし穴

クリステンセンも指摘するように、持続的イノベーションが没落するのは、顧客を無視するからではなく、むしろその要求を聞いたために(顧客とともに)没落するのである。グーグルのような破壊的イノベーションは、新しい(今は存在しない)企業によってまったく新しい市場(たとえば検索広告)を作り出すことが多いので、いくら既存企業の話を聞いても生まれてこない。

クリステンセンが『イノベーションのジレンマ』で指摘するように、企業として正しい判断の元企業努力を積み重ねインクリメンタル型のイノベーションを実施していると、いつのまにかアーキテクチャル型のイノベーションによって市場の質(アーキテクチャ)が変わってしまっているということが起こりえます。

破壊的なイノベーションは、実はユーザ主導では生まれないし、企業の地道な努力の積み重ねでは生まれないということです。
では、イノベーションを起こす企業は、アーキテクチャル型のイノベーションを目指せばよいかというとこれが非常に難しい。ほとんど狙ってできるものではありません。たくさんの暗中模索の後にたまたま行き当たるかもしれない、というものなのだそうです。「多産多死」の中から解が現れるのを待つしかない、と。

池田信夫blog:現代は「情報大航海時代」か

いまグーグルが行っているのは、かつて物的資源を財産権で囲い込んで収益を上げる資本主義が発見されたように、情報を囲い込まないで持続可能な経済システムが存在するのかどうかという歴史的な実験である。それが存在するのかどうかはあらかじめわからないし、コロンブスのようにインドだと思ったら新大陸だったということもあるかもしれない。



先の宮田さんの記事によれば、人材育成としては、最初はインクリメンタル型のイノベーションのマネジメントを経験させ、その後にアーキテクチャル型のイノベーションに取り組むという2段階を踏むことが重要だという指摘がありました。

いずれにせよ、宮田さん自身が体験したアーキテクチャル型のイノベーションがほとんど予算無しで実施された研究だったということからも、いろいろな研究や取り組みを試みては失敗するというのを繰り返すしか、アーキテクチャル型のイノベーションは生まれてこないんでしょうね。
しかし、それだけやってたら会社をクビになると思うので、インクリメンタル型のものに取り組みつつ余力で取り組むということになるでしょうか。

0 コメント:

 
Clicky Web Analytics