2006年12月12日火曜日

ユーティリティ・コンピューティングをロングテールへ(アマゾンの新たな挑戦)

最近、Amazon.comも矢継ぎ早に新しいサービスを開始しています。とくに注目されているのは、Amazon Elastic Compute Cloud(EC2)やAmazon Simple Storage Service(S3)といったユーティリティ・コンピューティング分野かもしれません。そこで、次の3つの観点でAmazon.comの最近の取り組みとロングテールについてまとめたいと思います。

* Amazon.comのユーティリティ・コンピューティングへの取り組みの新しさ
* Amazon.comのユーティリティ・コンピューティングは、e-リテール・プラットフォームのオープン化という新しい挑戦に基づくもの
* Amazon.comが目指さなかったもの:日本の小規模製造業や地域の中小企業でのロングテール的取り組み



■Amazon.comのユーティリティ・コンピューティングへの取り組みの新しさ
アマゾンのユーティリティコンピューティング事業参入--CEOベゾス氏が狙う今後とは

ユーティリティ・コンピューティングは、何年も前から注目されてきました。たとえば、IBMも、ITを電気やガスのようなインフラにする、そのためには従量課金的なユーティリティ・コンピューティングの実現が重要である、としてきています。
ところが、あまりうまくいっていません。

理由はいろいろあると思いますが、今までユーティリティ・コンピューティングをとなえてきている企業が従来型の大手ITベンダであり、ターゲットも大手企業だったというのもあるかもしれません。大手企業では、自前でITリソースを調達できるうえ、今までもそうしてきてかつ成果もそれなりにあげているので、新しいコンピューティング・パラダイムへ移るには時間がかかります。

また、ユーティリティ・コンピューティングを売ろうとしてきた大手ITベンダも、実はユーティリティ・コンピューティングが普及してしまうと自社のハードウェアが売れなくなるので、口先では言うものの現場の営業がどこまで積極的に推進してきたかというとほとんど皆無でしょう。

そんななか、コンピュータ・ベンダではないAmazon.comが、このユーティリティ・コンピューティングを実現しようと取り組み始めているため関心が集まっています。

Amazon.comのユーティリティ・コンピューティングのターゲットは、個人や中小零細企業です。また、Amazon.comは自社でハードウェアも製造していませんしハードウェアを売る必要もありません。ここが、今までのユーティリティ・コンピューティングの取り組みと大きく異なるところです。期待させる部分でもあります。

こうしたビジネスモデルは、今までのAmazon.comの取り組みと合致するものでもあります。
上のリンク先でも、「私は、薄利多売ビジネスの手堅さを常に信じてきた」というジェフ・ベゾスCEOの言葉が紹介されています。



■Amazon.comのユーティリティ・コンピューティングは、e-リテール・プラットフォームのオープン化という新しい挑戦に基づくもの
Amazon.comの特徴は、言うまでもなくロングテール・ビジネスの実現だと言われています。この実現のためには、流通体制の構築とITの活用が重要であり、Amazon.comはそこに莫大な投資をしています。

そして、いまやAmazon.comは、こうして構築した"eリテール・プラットフォーム"とも言うべき自社のリソースを外部からも利用できるようにして課金するというビジネスモデルを進めているようです。

それは、USで開始されているFulfillment by Amazonというサービスも見てもわかります。たとえば、次のリンク先によれば、

Nikkei BPnet 21世紀に勝つビジネスモデル:第9回 Amazon.com:eリテール・プラットフォームの覇権を目指す

開発したマーチャンダイジングシステム、インフォメーションシステム、ロジスティックシステムを自社で占有することなく、ネット上の多数の個人・企業が利用できるようにした。その狙いは、「eリテールをしようとする誰もがAmazon.comのオペレーションに依存する世界」を構築することである。

と分析されています。

つまり、IT資源のみならず、流通体制についても外部から利用できるようにしているということです。

ちなみに、この記事は、Aamazon.comと比較しながら楽天を"寄合百貨店"、ヤフーを"ターミナル駅の駅ナカショッピングセンター"と分析しています。Amazon.comは、"トータル・オペレーション・プロバイダー"です(これだけちょっと言葉のままではわかりにくいですが)。 Amazon.com自体に対する分析も非常に興味深いです。

話を元に戻して、Amazon Elastic Compute Cloud(EC2)やAmazon Simple Storage Service(S3)、Fulfillment by Amazonといったサービスを開始したAmazon.comは、ロングテールというビジネスモデルを自社の資源の外部への開放という形で進めていこうとしているようです。

書籍などでのロングテール・ビジネスは、需要の少ない商品をそれを欲する少数の人に届けるというマイクロ・マッチングがポイントでした。80:20の法則(パレートの法則)の小さい部分、べき曲線のおしりの部分(テール)で利益を上げるという今までのビジネス常識を覆すものでした。

e-リテール・プラットフォームのオープン化は、ターゲットが小さいという意味ではロングテールと言えるのかもしれませんが、マイクロ・マッチングというわけではありません。需要が少ないものを売っていくというよりも、もともと需要が無いか不明なところに低価格でプラットフォームを提供することで需要を掘り起こそうというもの、べき曲線としてもともと線が無いところにべき曲線のテール部分を薄く浮き上がらせようとしているビジネス・モデルなのかもしれません。
そのため、書籍での小さい需要をビジネスとして黒字にするまで何年もかかっていますが、ユーティリティ・コンピューティングの黒字化は同じだけかもっと年月がかかる可能性もあります。

そういう意味では、Amazon.comとして順当なビジネスの拡張とも言えますが、書籍等でのロングテールとはまた違ったロングテール・モデルへの挑戦となるのかもしれません。



■Amazon.comが目指さなかったもの:日本の小規模製造業や地域の中小企業でのロングテール的取り組み
もし、Amazon.comがロングテールに順当に取り組むのだとしたら、書籍だけでなくもっと他の商品へのカテゴリの拡張ということも考えられと考えられるかもしれません。
たとえば、日本でそのあたりに取り組んでいる企業が次の記事で紹介されています。

消費財製造業でのロングテールへの取り組み。
ロングテール現象を普通の企業が事業機会にする方法 その1
ロングテール現象を普通の企業が事業機会にする方法 その2 「マーケティング」は「ロングテール」に取って代わられるのか
ロングテール現象を普通の企業が事業機会にする方法 その3 ニッチなニーズを仲介「マイクロマッチング」

地域の中小企業に対するロングテールへの取り組みについては、次の記事に紹介があります。

ITmedia:おせっかいなCGMと、フランチャイズが結ぶロングテール

ロングテールを、小規模製造業や地域の中小企業のような、文字通りロングテールを必要とするところに拡張していく取り組みとして興味深いです。
Amazon.comが黒字化まで時間がかかったように、こうした取り組みが実を結ぶまでにはもしかすると時間がかかるのかもしれませんが。



なお、最近のヒット作の減少とロングテールの関係については、ロングテールの提唱者アンダーソン氏自身の言葉を交えた次のような記事があります。
ITmedia:小さくなるヒット、伸びるロングテール

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