2006年9月2日土曜日

ITアーキテクトと建築家

前エントリで、アーキテクトと哲学者を併記しました。ここで言っているアーキテクトとは、ITアーキテクトのことだったのですが、当然、ITアーキテクトと本当の建築家(アーキテクト)を比べて考えてみることもおもしろいことです。もちろん、ITアーキテクトの由来は建築家ですので。

最近、こういう記事がありました。

「どんな家が欲しいのか,依頼者には分からない」

テレビ番組の「ビフォア・アフター」ではないですが、漠然としたイメージしか無いところから、建築家(匠)がもろもろの問題を解決し、依頼者を満足させる建築を作っていくというものです。

先の記事でも、

ある一家がやって来て「土地はあるので,そこに家を建てたい」と言う。中村氏は,デザインや間取り,機能についは何も聞かないで,その一家の生活の様子や家庭でのエピソード,大切にしている考え方や好きなことを聞いたり,現地に足を運んで風景を眺めたりしている。

とありました。

つまり、建築家は、その建築を作る環境や依頼者(建築の将来の利用者)との対話から、設計を進めていきます。その過程こそが非常に重要なのです。

建築家であること —建築する想いと夢』日経アーキテクト編

を読みましたが、そこでも、とくに公共建築において、住民との対話が非常に重要だと、何ヶ月も何年もかけて地元住民と議論を重ねて建築を設計していく、という事例が出ています。ワークショップを何度も開いて、住民がどのようにその建築を使いたいのかというのを引き出していっています。

ITにおける設計でも、本当は同様のことが必要でしょう。つまり、要求は依頼者が明確に持っているのではなく、依頼者と十分な議論を重ねていっしょに作っていくものなのです。

最近は、

OpenThology

という要求開発の考え方も流行ってきました。もちろん、従来からも要求管理工学という学問は存在します。よりよいシステムを作っていくために、「要求開発」ということはどんどん大切になっていくでしょう。

ユーザ(設計依頼者)の意識もどんどん変わっていく必要があります。つまり、業者に丸投げするのではなく、業者と議論を重ね、エンド・ユーザも含めていっしょに要求を明確にしていく過程を重視し、その部分にもっと予算をつぎ込むべきです。

とくに、すでに他社で実現している一般的なアプリケーションとか、汎用的なアプリケーションを開発するのではなく、自社のコンピテンシーをいかしたオリジナルなアプリケーションを開発していくのに、エンド・ユーザも巻き込んだ要求開発というのは非常に重要になってくるでしょう。

建築業界でも、ここ10〜20年ほどで変わってきたそうです。つまり、以前は、建築家の個性をいかに表現するかという観点での建築が多かったのですが、最近になって箱物批判や、より都市や景観、環境を重視する立場から、建つ場所の環境や住民との対話を重視した設計に変わってきているようです。もちろん、個性的なデザインの住宅やビルも依然としてあるわけですが。

ITでも、多くのユーザが使うようなものにおいては、業者が主張する新技術をいかに適用するかだけでなく、要求開発という部分が重要になってくると思われますし、その流れこそよいものを作るうえで重要だと思います。もちろん、新しいテクノロジーのものもなくなることはないですが。

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