2006年9月12日火曜日

著作権がプログラムに適用される歴史的経緯

訳あって更新できていませんでした。

先日の「インターネット時代の著作権」に絡んで、著作権についてもう少し整理。

著作権の一般的イメージとしては、作家や画家、音楽家の創作物についての権利、というのがあると思います。それは、所有権の延長として、物ではない情報についても所有権を認めようという考え方とも言えると思います。

一方で、ITの世界では、プログラムに著作権があります。これについては、独創的なプログラムについてはその作者の権利を認めよう、、、というものでもどうやらなさそうです。
というのも、アルゴリズムやプログラムの仕組み、つまりプログラムの内容には著作権がありません(特許での保護対象となります)。プログラムの著作権とはあくまで書かれたプログラムそれ自体が対象なのです。ここが勘違いしやすいところなのですが。

どうしてこんなややこしいことになるのか?

著作権は、その表現されたものに対しての権利だからです。同じ内容であっても著作者と表現が異なれば別々の著作権となります。
それにしても、ITのプログラムで"表現"なんてほとんど考えないですよね。にもかかわらず、"著作権"が適用されているのがややこしいところです。

それには著作権の成り立ちを考えた方がわかりやすいでしょう。
英語で著作権のことをなんと言うでしょうか?"Copyright"です。
では、フランス語ではなんと言うでしょうか?"Droit d'auteur"です(droitは権利、d'は英語のof、auteurは著作者)。
ドイツ語では?"Urheberrecht"です(Urheberは著作者、rechtは権利)。

あきらかに日本語は、フランス語やドイツ語の翻訳として「著作権」があります。英語の翻訳としてなら正確には「複製権」になりますね?

そう、ヨーロッパの著作権とアメリカの著作権はそもそも違うものなのです。

実際、1886年にベルヌ条約という国際的な著作権に関する条約ができますが、アメリカは参加していません。独自の著作権の考え方を持っていたからです。その後、アメリカがベルヌ条約に参加するのは、なんと1世紀以上過ぎた1989年のことです。

アメリカでは、著作物に対してサークルcを表記し、登録して複製権を管理していました。現在は、登録制は廃止となったそうですが、行政指導としてサークル cは付けているようです。したがって、およそ芸術家の著作物とは異なる企業が作った資料にもサークルcが付けられることになります。複製権の主張という意味です。

で、ITはアメリカで発展してきました。アメリカでは、ITのプログラムについても「複製権(Copyright)」を適用します。プログラムのソースコードをそのままコピー&ペーストで複製することについての作成者の権利の主張です。

という歴史的経緯からもわかるとおり、芸術作品を中心とした表現物と表現者に対する保護を目的としたヨーロッパの著作権と、情報の複製の保護を目的としたアメリカの著作権(複製権)が、日本語で同じ「著作権」と呼ばれているのが混乱の始まりなのです。
もちろん、アメリカでは芸術作品もCopyriht(複製権)で守られていますし、ベルヌ条約に参加したのでヨーロッパの著作権とアメリカの複製権は同等のものとして扱われています。ですので、どちらも「著作権」と表現するのは誤訳ではないのですが、理解をややこしくしている一因ではあると思います。

こういう歴史的経緯を認識した上で、インターネット時代の著作権についてもその運用を考えていくべきと思います。

0 コメント:

 
Clicky Web Analytics