2006年9月20日水曜日

フェアユース:創作のインセンティブと利用促進のバランス

ここ何日かで、オンライン動画配信がにわかに活気付いていますね。

先週は、

「YouTubeとMySpaceは著作権侵害者」——レコード会社が訴訟を計画か

というニュースが流れたかと思ったら、今週は、

Warner MusicがYouTubeと共同事業,Warner音楽ビデオをユーザービデオに開放
(メディア・パブより)
Warner、YouTubeビデオの楽曲にライセンス認可
(TechCurnchより)

というニュースが。

ユニバーサルとワーナーという巨大なコンテンツ保有会社が相反する態度を表明したわけです。
ただし、ワーナーの方もライセンス認可権はもっているので、ワーナーの動き次第ではユニバーサルと同じような態度となってしまうわけですが。

せっかくワーナーが前向きな動きをしてくれたのですから、インターネット・ユーザはここでこそまっとうな行動に出るべきですね。
ミュージシャンや映像作家の著作権を尊重しつつ、文化の発展のために正統な引用はどんどんしていくべきでしょう。



他方で、先日紹介したアマゾンのUnBoxやアップルのiTVに関連してこういう記事もありました。

池田信夫blogから
映像ダウンロード

これを読む限り、アマゾンのサービスもアップルのサービスも、テレビで楽しむにはまだまだな気がしますね。
もとよりアマゾンのサービスはPCで見ることが想定されている気がするので、PCで映画やテレビを見たいという需要にはこたえるでしょうが。

アップルのサービスは、ダウンロードに数十分〜数時間かかる上、解像度はテレビで見るに耐えないかもしれない。となると、高いiTVを買って、DVDにも焼けない動画をお金払ってダウンロードするよりは、近くのレンタルビデオ屋に行った方が安くて高画質で種類も多くいいかもしれませんね。

今後に向けての第一歩としての価値は高いかもしれませんが、これでブレークするにはちょっと弱い気もします。

ちなみに、こういうニュースもありました。
Google VideoがAppleのiTVに接近中



さて、話は戻って、ワーナーがYouTubeにラインセンス認可しようとしているのは、TechCurnchの記者によれば、

レコードレーベル側がデフォールトでDRMを用いてコンテンツの再利用をロックしてしまうのではなく、ユーザーの利用形態はデフォールトでオープンにしておき、利用形態を判断した上で著作権者に拒否権を与えるというものだ。これは著作権のあるコンテンツをそのままの形で再利用することのプロモーション効果を現実的に認識した結果だろう。

とのことです。
アマゾンやアップルのサービスがDRMがちがちなのに比べると、ワーナーの考えは非常に柔軟なものになっています。

ところで、アメリカには、文化的資産について"フェア・ユース"という考え方があります。

フェアユースについては、たとえば、
ネット環境下の著作権と公正利用(フェアユース)

創作者のインセンティブを損なわない範囲で利用促進による社会的文化的利益を得ることは、"フェアユース"の範囲として著作権法上の制限を受けなくてよいとされています。

Creative Commonsの考え方の根底にもフェアユースがあると思います。

ちなみに、Creative Commonsについては、
クリエイティブ・コモンズは著作権論争に終止符を打つか

そして、ワーナーにおいても、本音は宣伝効果でしょうが、建前としてはこの"フェアユース"の促進ということがあると思います。

実際、これだけ著作権のあるコンテンツが氾濫する中で、従来の著作権の仕組みを維持することはかなり難しいものとなってきています。
テレビ局でさえ、本来であれば著作権者への許可やロイヤルティの支払いをきちんとすべきなのですが、まともにできているのは日本ではNHKだけと聞きます。

そんながんじがらめの著作権の中、文化を促進しろというのも至難の業です。
そこで、ワーナーのように、いったんは自由に使わせておいて、あきらかに著作権者の不利になるような使われ方をしていた場合には著作権法にのっとり制裁を加えるというのは至極まっとうな論理だと思います。

あとは、創作者への(経済的)インセンティブをどうするか、というところです。

ワーナーの場合は、YouTubeでの広告料を折半するようですが、はたしてそれで創作者への還元は十分なのでしょうか?
もちろん、広告料だけでなく、宣伝効果に伴う商品の売り上げも勘案されているとは思いますが。

そこで、たとえば、創作者の経済的インセンティブを税金でまかなうというのはどうでしょうか?文化促進税とかいう名目で。

フェアユースのような社会での公正な利用を促進するためには、国家がそれを保証して公正さと利用の促進のバランスを保つというのは間違ってはいないと思います。
また、Creative Commonsのように文化資産を共有財産として扱うのであれば、共有物の公正な利用という観点でも国家による保証というのはないわけではない。

そこで、文化促進税を徴収して創作者への配当に回す、と。今でもJASRACなどの中途半端な団体が著作物利用料を回収して著作権者に還元していますが、それならいっそう国が税として実施すればどうだろうか?と思ったりするわけです。

もちろん、なんでもかんでも税金でまかなうのはよくない面もたくさん出てくるとは思いますが。
なにより人によってその税金の恩恵を受ける度合いは大きく違いますからね。そういう意味では不平等な税になりそうです。

まあ、まず実現はしないでしょうが、フェアユースやCreative Commonsというくらいならそこまで考えてみるのも一興じゃないか?と思ったりして書いてみました。

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