青色LED訴訟や、日立の光ディスク読み取り技術訴訟の弁護士をした升永英俊さんによる記事です。
知財新時代に備えよ——第1回 職務発明訴訟の勝ち組弁護士が技術企業に緊急提言
知財新時代に備えよ——第2回 巨額の発明対価は欧米が真似できないニッポンの競争力だ
自画自賛というか自己正当化のロジックもあるのでしょうが、こういう戦略が背後にあったのかと興味深く読みました。
青色LEDの中村修二さんは、発明者に正当な対価を支払わせないような国は捨てて、しかるべき報酬が得られるアメリカに行くと言ってアメリカに行かれましたが、いやいやアメリカの企業でこそそんな対価は支払われていないだろうとみなが突っ込みを入れたと思います。
実際、アメリカでは社員は企業との契約で縛られすごい発明をしたからといって莫大な報酬を得ることはできません。
升永弁護士は、逆に、今回、日本(の特許法)で発明への報酬を認める判決が出たことから、アメリカや他国にない強みとしてそれを活用しよう、と言います。
つまり、日本の技術者にとって発明への強いインセンティブが働き、技術革新が活性化する機会が増大する、企業も知的財産を使った利益独占による超過余剰金を報酬に当てるので財務的にもそれほど痛いわけではなく、かつ社員に技術革新意欲を沸かせることができて効果的だ、というものです。
記事の中で、あるアメリカの知財弁護士の発言として、
米国では、社員は入社時の契約で発明の譲渡対価の請求権を放棄させられるため、従業員発明者は法的には発明の譲渡対価を得ることはできない。発明者に超過利益の一部を分配する日本方式が技術者を勇気づけ、次々と大型発明が生まれれば、米国は日本に後れをとるのではないかと危惧している
という発言が引用されています。
まあ、そんなにうまくいくものか?とも思ったりしますが。
アメリカでは、技術者はベンチャーを起こし、その技術革新の対価を、高騰した自社株、あるいはより大きい企業の買収というかたちで得ているように思えます。技術者にはそういうインセンティブがあり、場合によっては莫大な富を得ることができます。
ただし、このモデルでは、ソフトウェア産業など研究に設備や資産がそれほど必要のない産業でしかなりたたないように思えます。
他方で、升永弁護士モデルだと、技術者は企業の中で研究を行い、画期的な発明をした場合には、その超過営業利益の何パーセントかを得ることができるようになります。
ベンチャーを立ち上げるよりは儲け幅が小さいかもしれませんが、企業に守られて研究することができ、かつ企業の知的財産やノウハウを使うこともできます。
どちらがいいのかはわかりませんが、升永弁護士モデルはそれはそれでひとつのあり方としてなりたっていると思います。
日本の企業風土や歴史からいってもそっちの方が適しているケースが多いかもしれませんね。
2006年10月24日火曜日
知財活用と技術者のインセンティブ
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