2007年9月22日土曜日

Googleがオープンなソーシャルグラフを目指すようです

Googleを中心に、なにやらソーシャルグラフ情報に関する新しい動きがあるようです。ちょっと調べてみたのでメモ代わりに書き残しておきます。

ソーシャルグラフとは、人のつながりをインターネット上で表した情報であり、具体的にはmixyのマイミク等、SNSの友人関係情報のことになります。

インターネット上では、情報と情報、人と人が縦横無尽につながってきています。たとえその人のことを知らなくてもつながっていくことが可能です。こうしたつながり方を3つのパターンに分類してみることができます。

1. 一時的なつながり
2. 恒常的なつながり
3. 社会的なつながり

ここで、「1.一時的なつながり」は、特定の目的のためだけに、ある一時点に匿名同士でやり取りするような場合です。オークションサイトでの売買関係、匿名掲示板サイトでのコメント関係などです。
「2.恒常的なつながり」は、識別可能なID同士のつながりです。ブログでのリンク集やトラックバック、定期購読などが該当します。共有写真サイト、共有ブックマークサイトなどもこれになります。
「3.現実のつながり」は、リアルの社会でも知り合い同士の人がネット上でつながるケースです。ブログなどでもつながりますが、SNSサイトでの関係が主に当てはまります。

1.や2.もインターネットの強力な側面を示していますが、実は3.も、インターネットの協力な一面を示しています。
SNSの強み、ブログ等との差異、それがまさに3.になります。

ソーシャルグラフは主に、3.の情報ということになります。もちろん、2.のつながり方も一部含まれてくるとは思います。

こうしたソーシャルグラフ情報の価値については、たとえば、Wired Visonで次のような形で表明されています。
2007年8月の「Wired Vision:「SNSのオープン化」を提案する」で、既存のサービスを利用してアメリカ第2位のSNSサイトFacebookと同じような機能のものを作ろうとしたが失敗に終わった、その理由は人と人とのつながりを機能として実現できなかったからだということです。

おそらく、Facebookの機能の90%までは再現できたと思うのだが、人と人をリンクし、両者の関係を示すという、最も重要な機能が作成できなかったのだ。

つまり、SNSの強みとはまさにその関係情報を保持しているということにあることになります。

他方で、そのFacebookはと言えば、APIなどをオープンにし、Facebookのプラットフォーム上で自由にアプリケーションが作れるようにしています(Facebook(SNS)が展開するオープンなソーシャルネットワーキングの世界)。つまり、Facebookの中であれば人と人との関係情報などを使いながらいろいろなアプリケーションが作れるようになっているということです。先のWiredは、人同士の関係情報(=ソーシャルグラフ)がFacebookの中に閉じていることに対する批判でした。

ここに来て、最初に指摘したような、SNS内の関係情報が閉じている問題に呼応するような動きが出てきています。

まず、LiveJournalの創設者で、SixApartのチーフアーキテクトであったBrad Fitzpatrick氏が、「3.社会的なつながり」をインターネット上の情報として表現したものを"ソーシャルグラフ"と呼び、今後その情報がどう取り扱われていくべきかについての論文を公開しています(2007年8月17日)。

antipop:[翻訳] ソーシャルグラフについて

Thoughts on the Social Graph

さらに、このFitzpatrick氏を含めた複数名がGoogle本社で会合を持ち(2007年9月20日)、このソーシャルグラフについて、もっと言えば、Googleがソーシャルグラフをどうしていくかの戦略について議論していることがリークされました。

グーグル、Facebook潰滅のXデーは11月5日

具体的には、Googleは、Orkut(Googleが買収したSNSサイト、でもパッとしない)とiGoogle、GMail、Google Talkなどのソーシャルグラフ情報を外部から読み書きできるAPIを公開していくようです。その第1弾が11月5日のようです。

今までは、Facebookにユーザ登録された人同士が、Facebook上でしか、ソーシャルグラフ情報を取り扱えませんでした。
Googleのこの取り組みが実現すると、さまざまなサイトやサービスからソーシャルグラフ情報がやり取りできるようになります。

先日のエントリで、共通ネットIDについての議論を紹介しました。その議論で言うと、ソーシャルグラフは匿名性の議論と関係してきます。
アメリカでは、インターネット上でも実名で活動することが多いため、こうしたソーシャルグラフ情報をオープンにすることに非常にメリットがあるのだと思います。
日本では、ほとんどの人が匿名で活動しており、mixyならmixyの中で閉じた活動で満足しているようなので、すぐに影響してくるようなことはないのかもしれません。

が、最近OpenIDを採用するサイトも増えてきており(アメリカではとくに)、長期的には複数のサイトやサービス間を同じIDで活動することも増えてくると思われます。そのときに、こうしたソーシャルグラフ情報をどのようにオープンに取り扱うのかということが、サービスにとって重要になってくるかもしれません。

また別途紹介したい最近の著作権の議論の中でも、「デジタル社会で権利をもつには、IDをもつことが出発点だ。何もしないで権利が発生するという現行法は根本的に間違っている」という発言が紹介されていました

いろいろ考えると、前から書いているように、やっぱりインターネット上でも固定IDで活動した方がなにかとよいと思うのですが、日本では長い道のりになってしまうのでしょうか。

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