2007年9月9日日曜日

意味のある著作権の登録制度とは

著作権登録制度についての最近の話題。

■権利者情報を検索するための情報システムを作る?
著作権団体17法人で組織する「著作権問題を考える著作者団体協議会」が、2009年1月から、"権利者情報を検索するための情報システム"なるものの運営を始めるそうです。

著作権17団体、権利者データベースを2009年1月に開設

個人的には、17団体もあるのか、とまずそっちに愕然としてしまいましたが、これは、著作権期間を70年に延長することに対する「権利者を調べるのが困難で2次利用が阻害される」という批判への対策となっているようです。

著作権の保護期間延長問題、権利者側への反論相次ぐ——文化審


権利者データベースを用意すること自体は、前に名和小太郎さんの本を紹介したエントリ「情報に対する所有権(著作権でどこまで取り扱えるのか)」でも書きましたが、名和さん以外にも多くの人が主張されています。

この制度が、このデータベースに登録されていないコンテンツは自由に使用&複製しうる、ということであれば、パブリックドメインの明確な定義となり2次利用促進という観点でも意味は大きいでしょう。
ただし、「著作権問題を考える著作者団体協議会」はそこまで言っていないように見えます。つまり、彼らはあくまで便宜上のツールとしてデータベースを用意すると言っているだけで、ここに登録されていないものについてももろもろの著作権を主張しそうです。そこが大きな問題だと思います。

あと、IT業界の人間としては、このシステム構築を200-300万円で行うと言っているのにも、ほんとに使えるシステムを作る気あるのか?ただのエクスキューズじゃないのか?と思ってしまいました。


■著作権の登録制度
著作物の登録制度については、最近の池田信夫blogでも取り上げられていました「著作物の登録制度」。
ただし、こちらは、白田秀彰さんのICPFセミナーの話です。

白田秀彰さんの唱える著作権制度は、個人的には大賛成です。「ICPF第21回セミナー「オンライン社会における著作権のあり方」要旨
というか、以前から白田さんのホームページ等を読んできているので、単純に自分が影響されているだけなのでしょうが。

ここで主張されている著作権制度は、2階建て方式で、まず、経済的流通とは無関係に著作者の権利を定義します。これはベルヌ条約がベースとなります。
その上で、経済的流通のための制度を用意します。そこでは、作品は登録制となり、作品に対する証券売買市場を作るなど作品の経済的価値を最大限に高めるための仕組みが用意されます。

経済的価値を生むものとしての著作物を登録制にし、登録されていないものについては著作者の権利は守られるが2次利用は自由となるというものだと思います。これは、自分の表現で言うならば、「権利の問題と経済的対価の問題をきちんと切り分けて、Creative Commonsでもなんでも権利の維持と著作物のコストの低い伝播方法をルールや制度として整え」るべきということになると思っています。

ただ、残念というか気になるのは、自分的にまっとうな議論をしているICPFが民間フォーラムで、???な議論が錯綜しているのが文化庁の文化審議会著作権分科会だということです。文化審議会での議論は形骸的なパブコメなどを経て法制化へとつながっていくのでしょう。
官僚機構は、過去の制度を踏襲しつつ各権利者間の調整を行うのがやっとなので(実際には、強い権利者の言いなりになることが多いので)、ほんとうにあるべき姿が描けないのが問題です。
これからの時代、情報としてのコンテンツをどう扱うかが非常に重要なので、ここはいったん抜本的に著作権制度を考え直してほしいところですが。

同じ著作権の登録制度でもぜんぜん違うものになりそうですね。
著作権の登録制度を意味あるものにするためには、単にデータベース用意しましたではなく、きちんと制度の中に位置づけてほしいものです。


ところで、文化庁にはすでに著作権の登録制度があることを発見しました。
著作権登録制度について
これってまともに運用されているのでしょうか?


ちなみに、話はずれますが、補償金制度については、文化審議会著作権分科会の私的録音録画小委員会で議論されているようで、そこで進んでいる話は、「音楽配信メモ:ダウンロード違法化/iPodの補償金対象化」がほぼ決定した件と、ITmediaの記事で抜粋されている発言についての補足」に紹介がありました。

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