2006年11月24日金曜日

音楽税とDRM

ある音楽業界関係者が、音楽ファイルに対するDRMへの反発の立場から音楽税を提唱していることに対して、Techcrunchの記者が反対意見を書いています。

TechCrunch Japanese:DRMのかわりに音楽税とはあまりにバカげている

たしかに、音楽を創造することへの対価がすべて一律の税金で支払われることになると、音楽業界の創造性を阻害することにもなりかねません。業界内のパイの奪い合いだけとなり、新規開拓へのインセンティブが低くなるからです。

他方で、現在も、ドイツや日本では補償金制度によって、コピー媒体の価格に著作権料が一律上乗せされています。これは税金ではないですが、"音楽税"の発想と似ているものとなります。
違いは、補償金はコピー媒体となるメディアなどにだけかかるものなので、CDの売り上げなどは実際に売れた枚数に基づくことになり、Techcrunch の記者が批判する音楽業界の創造性はそこで担保されます。他方で、音楽税の場合、もし音楽業界の全ての売り上げを税に依存するとなると、記者の言うとおりの創造性の欠如が問題になるかもしれません。

が、音楽税が、音楽配信に対してのみのものだとすると、それ以外の売り上げ、たとえば、コンサートや関連グッズ販売、さらにはもしかすると細々と残っていることになるかもしれないCDやレコード販売の売り上げは、工夫次第で増やしていけるものとなり、音楽業界の創造性のインセンティブは失われない可能性もあります。
音楽配信はパイの奪い合いだけとなるので、おそらく音楽業界はそれ以外のところに活路を見出し、場合によってはイノベーションを起こしていくかもしれません。
それは、現在、フリーソフトやWebサービスを手がけている企業と同じ発想で音楽を取り扱うということにもなります。


話は少し変わって、他方で、こういう記事もありました。

メディア各社,違法コピー撲滅には法的手段より強固なDRM技術の開発を期待:ITpro

音楽会社も含めてメディア各社はDRM技術に期待しているようです。もちろん、このアンケートの選択肢には"音楽税"はなかったと思われるので、それについてどう考えているかはわかりませんが。

DRM技術は、いちいちネットワークにアクセスして認証を得なければいけなかったり、コピー回数や場所が限定されていたりするために、エンドユーザに不便をかけるものでもあります。

もともと著作権では"私的利用"によるコピーは認められています。
次の記事に、YouTubeでの話としてではありますが、今の日本でどの程度が"私的利用"の範囲になるかある弁護士さんの見解が述べられています。

YouTubeは“包丁”か“拳銃”か? 著作権法の専門弁護士に、YouTubeの合法性について聞く / デジタルARENA

この話に基づくのであれば、極端な話、10回未満のコピーは認められてもよいと思います。それもどんな媒体に対しても。
たとえ10回コピーできるとしても、後で自分で他の媒体にコピーすることを考えれば、10回分を使って10人にコピーするなんてことはなく、せいぜい5人くらいにコピーする程度ではないでしょうか?この程度は、現在の貸し借りの世界でもありえる数字です。
今のDRM技術による回数制限や媒体制限は少し厳しすぎる気がします。

また、配信料が十分安ければ、人は友達からもらってばっかりいることに引け目を感じたりするので、ほんとうに欲しいものは購入するとも思います。今のDVDソフトが低価格なためレンタルビデオ屋で借りずに買ってしまう人がかなりの数いるように。


著作物に対する経済的対価を得る方法については、コンテンツやメディアの違い、および配布規模の違いなどにより、さまざまな手法が模索されています。
1つ言えることは、著作物が広く広まることは、創作者にとっても消費者にとってもよいことだということです。ただし、その際に、創作の労力や価値に対して相応な経済的対価が支払われる仕組みをなんらかの形で構築する必要があるということです。そこの部分の社会的バランスの調整が今求められていることなのでしょう。

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