下リンク先の池田信夫さんのブログを読んでください。インターネット配信と著作権に関するアメリカのしたたかさを実感できます。
池田信夫 blog:踊る恐竜
「問題は訴訟ではなく、ビジネスなんだよ。訴訟を起こすのは弁護士ではなく顧客なんだから」
「ケーブルはたかだか300チャンネルしかないが、インターネットには無限のチャンネルがある。ハリウッドはネットを選ぶだろう。彼らは強欲すぎて YouTubeを殺すことができないのだ(They are too greedy to kill YouTube)」。彼は具体的には語らなかったが、「コンテンツの送り手が合意すれば、著作権なんて障害ではない」と、ILECとハリウッドの間で P2Pのときのような「取引」が進行していることをにおわせた。
私個人の正論としての意見は、インターネット配信と著作権の問題については、「著作権と著作物に対する経済的対価」で書いたように、権利の問題と経済的対価の問題をきちんと切り分けて、Creative Commonsでもなんでも権利の維持と著作物のコストの低い伝播方法をルールや制度として整えた上でインターネット配信を考えていくべきと思いましたが、アメリカでの現実はさにあらず、もっと早いスピードで現実的な対応が進んでいるようです。
YouTube自身、音楽会社と結んだものと同様の契約をNHL(米ホッケー・リーグ)などとも結んでいっているようです。著作権を音楽会社やホッケー・リーグに持たせたまま、配信方法をインターネット化させることで得られる経済的対価は折半するという方式です。
YouTubeが米ホッケー・リーグと提携,無料映像配信および広告関連で
ただし、「踊る恐竜」記事で取り上げられているハリウッドも、YouTubeが契約する音楽会社やホッケー・リーグも、コンテンツを本当に製作した人たちではなく、著作物を管理・配信してきた団体とインターネット配信会社との著作物の経済的対価に関する契約の話となっています。
つまり、アメリカで現実路線として進められているインターネット配信は、従来の著作権管理団体とそこで管理される著作物についての話なわけです。著作物を実際に製作した個人から合意のもと取り上げた上で著作権を独占的に管理している団体にとってみれば、著作権を確保しつつ経済的対価を得る経路が増えることはメリットの方が大きいと言えるでしょう。
とくに、YouTubeの配信の仕組みは、閲覧者が自由に編集できない形となっているので、著作権管理団体にとってはデメリットが少ないです。
そのあたりについては、「著作権より実をとる:情報の再独占と新しい広告収益モデル」でも書きました。
これはこれで、全員の言い分を聞くことができないような"著作権"などの問題の場合は有効な手段だとも言えます。「みんなが納得する枠組み作りの難しさ」でも書いたようにCreative Commonsであっても全員の言い分を聞くことに苦労しています。それだったら、とにかく大多数の経済的問題だけでも解決して前へ進んでいこう、というのも手段の一つとしては有効でしょう。
他方で、そのような著作権管理団体には所属していなくとも発生する著作権はたくさんあります。たとえば、インディーズ系の音楽作家、映画作家、書籍やマンガの著作者などです。これらの著作権については、上で紹介した現実路線とは別に、あるべき著作権とその対価の取得方法を模索していく必要はあると思います。
ちなみに、Googleは、
グーグル、ユーチューブ買収額のうち2億ドル相当を訴訟対策に
というように、確実に現実的路線で突き進んでいっていますね。その危険性と革新については「Googleは法を骨抜きにするか、新しい正義をうちたてるか」で書いたとおり。
また、日本の放送業界や通信業界での遅れについては、同じく池田信夫blogの「「NHKオンデマンド」の幻想」。
経済的対価については、訴訟による解決も含めてどんどん現実的な方法が進められていくでしょう。他方で、その経済的対価の根拠ともなる著作権のあるべき姿、著作物が文化の発展に寄与しかつ著作者の権利を守れるようなそういう形については、今後も模索が続くでしょう。
いずれにせよ全員が満足する形は困難なのでどこかで現実的な折り合いをつけていく必要があります。そのとき、先に進んだ著作物による経済的対価の現実的なあり方が折り合う着地点を提供するのかもしれません。
2006年11月20日月曜日
急速に進展する経済的対価のスキーマと著作権の折り合いの模索
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