ブログの倫理についての各国の反応
のコメントで、新しいエントリで返答を書くと言いながら、なかなか書けていませんでした。
Web2.0の時代、いろんな情報がインターネット上に溢れだし、誰もがアクセスできるようになってきています。とくに、ブログという仕組みの成功は、今まで個人の頭の中もしくは小さな集団の中に埋もれていた情報を大量に表舞台に引き出しています。
"情報"がこれだけ引き出されてきているのは、
・人間は何か情報を表現していきたい生き物だから
・情報がなんらかのかたちで自分以外の人の役に立つから
だと思います。
後者の理由は、実利的に役立つだけでなくて、楽しませたり時間を潰させたりということも含まれます。
ただし、情報が人の役に立つためには、情報を正しく取り扱う必要があります。
情報を正しく取り扱うためには、その情報の目的や文脈が明示されている、もしくは了解されている必要があります。
たとえば、新聞の情報は報道という目的のものであるため客観的事実に即している必要があります。大衆小説の情報は娯楽という目的のものであるため事実に即す必要はありません。現実世界では、これらの目的が、メディアの違いや、番組時間枠の違いなどで了解されています。もしくは、明示的に「フィクションです」と断り書きがあります。つまり、情報の目的と文脈が明確なのです。
一般新聞でウソを書けば、その新聞社は批判され、記者はなんらかの制裁を受けるでしょう。逆に言うと、彼らはそういう職業倫理で記事を書き情報を発信しています。他方で、街の落書きを読んでその内容をまともにとる人はいません。
新しく立ち上がってきたインターネットの世界では、境界がより曖昧になってきていると言えます。大手の新聞社のサイトから、市民ジャーナリストのブログ、個人のブログ、匿名掲示板、等々さまざまな形式で情報が発信され、その境目は非常に微妙です。それがインターネットの魅力にもなっているわけですが、どこまで信用してよいのかわかりにくくなっているというのも現状です。それが、市民ジャーナリストの貴重な情報を大量のゴミ情報の中に埋もれさせたり、詐欺などのサイバー犯罪を助長したりしている面もあります。
そこで、最近では、ブログ・ネットワークというものが出現してきています。最近といっても1年ほど前からですが。
ブログネットワークが本格離陸,VCも有望市場として注目
いろんなブログネットワークがありますが、基本的には、登録ブロガーから寄せられるほぼ信頼できる情報を集めて公開することで、集客率のアップと広告費の獲得を目指すものです。
いまや、自分的にも、特定分野での速報性の高い貴重な情報源となっています。
とくにUSでは大手メディアも負けじとインターネット対応を進めていますが、こうしたブログ・ネットワークとの棲み分けは次のとおりのようです。
ロングテールのブログ vs ショートヘッドの主流メディア
このような形で、ブログで発信される情報の"集約"の仕組みが、いろいろなレベルで出てきているのが現状といえます。最初に書いたエントリで引用した記事では、フリージャーナリストによる業界規制のようなものを作ろうという動きもありました。
ここで、"集約"は、先日のエントリで書いたように、「みんなの意見」が案外正しくあるためには必須の条件です。
その他の"集約"の仕組みとしては、たとえば、はてなブックマークのようなFolksonomyもあるし、オーマイニュースのような記者によるレビューつき市民記者ニュースサイトもあると思います。
こうした"集約"のおかげで、信用できる情報の拠点が形成され、そこからのリンクなりトラックバックで信用できる情報をもとにしたブログが書けるようになっています。
もちろん、ブログに真実を書く必要はないわけですが、その場合、それはそのような情報として(真実ではないものとして)発信されるべきです。狙って境界を曖昧にすることもまたブログの内容をおもしろくするためには効果的かもしれませんが、それもまた"曖昧なもの"として発信されるべきです。
昔は、アメリカで、オーソン・ウェルズが火星人襲来のラジオ放送を冗談で流したところ大パニックが起きたそうですが、現代のラジオ放送でそれをやるのは困難でしょう。メディアが成熟するとはそういうことなのかもしれません。
現在のインターネットでの情報発信はまさにその過渡期なのであり、情報発信インフラとして信頼にたるものになるかどうかが試されている時期でもあるのかもしれません。『「みんなの意見」は案外正しい』でも指摘されていたとおり、「みんなの意見」は条件次第で間違いうることもあります。多様性、独立性、分散性、そして集約の仕組み、これらがそろってはじめて信頼にたる情報となりえます。インターネットの世界では、多様性と分散性はある程度成立しているので、あとは、それを集約する仕組みと、独立性、これが重要なポイントとなってくると思います。
そして、集約の仕組みについてはブログ・ネットワークのようないろいろな取り組みが現在進行形で取り組み続けられています。
2006年11月13日月曜日
ブログ・ネットワークとメディアとしてのインターネット
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