『世界は分けてもわからない』福岡伸一、講談社現代新書
を読みました。
科学と非科学のあいだ:『生物と無生物のあいだ』を読んで Part 1
反復できない時間を生きる生物:『生物と無生物のあいだ』を読んで Part 2
で書いた『生物と無生物のあいだ』の著者の新刊です。
これまた非常におもしろい本になっています。こういう深みのある自然科学本は大好物です。帯もそそりますね。
「世界最小の島・ランゲルハンス島から、ヴェネツィアの水路、そして、ニューヨーク州イサカヘ−「治すすべのない病」をたどる」
ただ、今回の題材はあまりにも練られたもので、もしかしたら小説として書いた方がもっとおもしろかったかもしれませんね。雑誌に連載されたものをまとめた散文エッセーなので、全体として散漫な印象はあります。
クライマックスはネタばれするので書きませんが、その他にもルネッサンス絵画のあらたな発見にすでにマネ的無関心(ちょっと違うが)が見られたり、タンパク質合成と廃棄の生物システムの巧妙さが描かれたりと、題材にもなっているイームズのパワーオブテンよろしく、ご自身の旅とあわさって書物ならではのすばらしいロードブック(ムービー)になっています。
世界は分けていかないと何も筋道だてて整理できないし、でも、分ければ分けるほどその合間にこぼれ落ちるものが多く、どんどん全体から離れていってしまうという人間認識のサガとでも言うべきものがもう1つのテーマでもあります。が、こちらはまだまだ深堀りできたのではないか、とちょっと過剰に期待してしまったりもしました。
0 コメント:
コメントを投稿