2007年7月21日土曜日

国連重視が憲法改正を促し、国防軽視が護憲を促す

我、自衛隊を愛す故に、憲法9条を守る 防衛省元幹部3人の志
小池清彦、かもがわ出版

自衛隊としては自分たちの立場を守るために改憲を求めていると思いがちですが、必ずしもそうではなく、自衛隊の中にも護憲派が少なからずいるということがよくわかりました。そりゃあ、隊員の命を預かる立場としてみれば、戦争は反対なのでしょう。当然ですね。

書かれている内容は、講演やインタビューをまとめたものが多く、論理的とはとても言えませんが、なかなか考えさせられるところもあります。3人がとりあげられていますが、3人ともとくに重装備での海外派兵(を可能にする法律化)に強く反対しています。祖国を守るために志願してきた若い自衛隊員を、自分たちとは関係のない土地で無為に死なせるわけにはいかない、という思いのようです。

孫氏の兵法やクラウゼヴィッツの戦争論を引くまでもなく、戦争をしないことが最大の戦勝だとはよく言われます。
その意味で、現在の日本で本当に国防を考えるのであれば、憲法改正や軍備の拡張よりも近隣諸国との関係を改善していく外交を展開することが一番です。拉致問題さえ取り下げて、六カ国協議を進めることが現実的な国防につながるとさえ言い得ます。

他方で、戦後の日本はずっと国連主義と親米で来ました。その外交路線をより強化するためには、国連軍に参加できる組織と仕組みの保持は必須でしょう。ついで、米軍へ協力できる体制も重要となります。つまり、憲法九条は改正せざるをえません。

軍隊をもたない、したがって現実的強制力を持たない国連を通して国際的影響力を持っていくためには、国連軍に参加できる組織を作ることが急務です。
湾岸戦争のとき、日本は巨額の資金を投じましたが国連軍に参加しませんでした。その結果、日本の貢献は国際的には一切無視されてしまいました。そこから日本政府の方針が変わり、自衛隊の海外派兵が始まります。最初は戦後の治安維持に。ついで、イラク戦争のサマワに。国民の反応も批判的でなくなり、その頃から右傾化と言われるようになりました。

でも、よく考えると、国連主義の追求が、憲法改正を促していると言えるのです。
逆にアジア主義で考えると、憲法改正や軍備拡張を急ぐことはマイナスでしかありません。そして、日本の国防ということで考えると、戦争する可能性のある近隣諸国を逆なでする行為は百害あって一利無しです。

今の日本はこのようなジレンマに陥っているのであり、それを国民投票という国民の判断に押し付けようとされているわけです。
あくまで国連主義で、国際社会への貢献を重視していくのか(=憲法改正)、それとも現実的な国防優先で近隣諸国との関係重視で行くのか(=護憲)。

両方大事なことなんですけどね。憲法改正するならいかにアジア近隣諸国との外交をうまくやるか、護憲で行くならいかに国連や米軍と関わっていくのか、どちらを選ぶにしても、その反対の立場への十分な配慮が必要そうです。

しかし、こんな大事なことを選択できる能力というか資格がわれわれ一般国民にあるのでしょうか。こんなときは、一線を退いた、でも過去を背負ってきたお年寄りの意見を尊重するのが一般的だったりしますね。歴史や組織を見ても、こんなときのために老中や会長がいるんですもんね。

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