Tech-On:「コピー・ワンス」見直しの議論,事務局が5案を提示
情報通信政策部会のデジタル・コンテンツの流通の促進等に関する検討委員会で、地上デジタル放送のコピーワンス機能について次の5つの案が提示されたそうです。
1. 現行のコピー・ワンスのまま運用する
2. コピー・ワンスから「EPN」への運用に切り替える
3. HDD録画機への複数のバックアップを許容する
4. HDD録画機に蓄積した時点で「1世代のみコピー可」という情報を持たせるといった新しいルールへの変更を検討する
5. コピー・ワンスとEPNの併用など,番組ごとに運用ルールを変更する
コピーワンス技術も、視聴者に許容されるようなより柔軟なものになっていくのが現実的とは思います。
2006年12月12日火曜日
コピーワンスの見直し案5つ
2006年12月10日日曜日
2つの著作権法改正の動き(文部科学省と知的財産戦略本部)
前に少し触れただけの、「著作権法違反の厳罰化」についてもう少し(「著作権は主張すべき、でもどうやって?+著作権法厳罰化の動き」参照)。
最近、著作権法関連で2つの動きがありました。
1. 文化庁が今国会に提出した著作権改正法案
2. 知的財産戦略本部による2008年国会提出を目指す著作権法改正の動き
1. 今国会の著作権改正法案
今国会(2006年12月)に提出されている著作権改正法案は、いくつかの比較的小粒の修正がなされたものです。そのためかあまり話題になることなく、文部科学委員会の約2時間の審議で可決され、その後衆議院本会議でも可決されています。
主な修正内容は、
* IPマルチキャスト放送(事業者)に対して、著作権法上も放送事業者と同じ権利を与える
* 視覚障害者向け録音図書のインターネット送信に関する著作権の制限
* 機器修理時等の著作物バックアップに関する著作権の制限
* 著作権侵害に対する刑事罰の強化
などです(他にもあります)。
IPマルチキャスト放送の著作権については、地上波デジタル化にともない電波の届かない地域に対してIPマルチキャスト放送での代替が検討されていることに対応するものです。
ちなみに、GyaOなどはIPマルチキャスト放送事業者ではなくあくまで通信事業者とみなされており、とくに著作隣接権について放送局のような特権は認められていません。
ただし、次の記事によると、この著作権改正法案では、地域を限定すればこのような業者でも著作隣接権の特権を得られるように解釈できるそうです。
文化庁の「大英断」・著作権改正法案に潜む見過ごせない欠陥
改正著作権法が衆院で可決--IP放送にも放送事業者としての特権付与へ
法案は、
第165回国会における文部科学省提出法律案:著作権法の一部を改正する法律案
2. 知的財産戦略本部による著作権法改正の動き
2ch等Web上で少々波風立ったのがこちらの法案です。11月下旬に報道されました。
asahi.com:ダウンロード、海賊版は禁止 政府、著作権法改正を検討
おそらく、asahi.comが、
音楽や映像を違法コピーした「海賊版」をインターネット上からダウンロードすることを全面的に禁止する著作権法改正に着手する。
と表現してしまったために、「ダウンロードしただけでタイホかっ!?」、「リンク先に違法コピーを仕込んで逮捕に誘導するダウンロード詐欺が横行する」、「キャッシュの仕組みなどをわかってないのか、もう少し勉強しろ!」などの書き込みがあったようです。
そのあたりのリンク集としては、
ぬるいゲーム時事ブログ:著作権法改正でダウンロードしたりYouTube見るだけで逮捕!?
にまとまっています。
実際には、どのような行為が違法なダウンロード行為なのかはこれから詰めていくのでしょう。
文部科学省の文化審議会では、すでにこうした議論が始められていて、デジタルデータの一時複製に関して、次のような場合には著作権を発生させるべきではないとしています。
1. 著作物の使用又は利用に係る技術的過程において生じる
2. 付随的又は不可避的(著作物の本来の使用・利用に伴うもので,行為主体の意思に基づかない)
3. 合理的な時間の範囲内
(文化審議会著作権分科会報告書より)
ただし、結論は先送りされています。
また、それよりも、「知的財産戦略本部」は文部科学省とは独立した組織であり、文部科学省のこうした考え方がどこまで採用されるかは不明だということの方が問題ですが。
コンテンツ産業の発展のためには、不法なダウンロードを取り締まることも大事ですが、それよりも、新しい創造をした人に対していかに権利と名誉を守るか、そしていかに経済的対価を得られるようにするか、を考えることの方が重要でしょう。
それと同時に、いかにコンテンツを幅広く流通させるかも重要となります。
具体策として個人的に思いつくのは、
1. ゆるいDRMで保護しながら1つ100円程度の低価格でのコンテンツ流通
2. コンテンツは無料とし広告モデルを採用、この場合、いかに広告を見せるかの仕組みが重要
3. DRMで保護しないなら、ダウンロード負担金のような半分税金をとって著作者に配布
4. 寄付金(donation)方式や投票方式にするにはうまい仕組みが必要、かつこの場合もDRMは必須だろう
などです。
いずれにせよ、デジタルデータという特性を考えると、コンテンツそのもので儲けるというよりもその副産物で儲けるという、ITでのオープンソースのようなビジネスモデルになるのかもしれません。その場合、小規模/無名なコンテンツ製作者への経済的対価が極端に小さくなってしまう可能性もあります。それにともない、現在のコンテンツ制作のあり方が根底から変わってしまう可能性も否定できません。すなわち、大手出版社や広告代理店に働きながら趣味でコンテンツ制作するか(ITでいう多くのオープンソース・プログラマー方式)、もしくは資金を集めて大きな会社で運用するか(ITでいうRedhatやIBM、 Oracleなどの方式)。
はたして、それが正しいコンテンツ制作のあり方なのか、というところも含めて議論が必要でしょう。
今まさに、コンテンツを保護しつつ広く流通させるという二律背反をいかに実現するか、という点について、法制上技術上の革新と調整が求められているわけです。
知的財産戦略本部では、ダウンロードがどうとか、どういうダウンロードが違法なのかなどといった各論に陥ることなく議論が進んで欲しいものです。
ちなみに、最近のこうした著作権法がらみの改正のきな臭さについては次のブログが参考になります。
とくに、著作権法が、著作物の保護と効果的な利用という目的から逸脱し、共謀罪も含めたネット監視社会に利用されてしまうのではないか?という懸念が表明されています。
保坂展人のどこどこ日記:著作権法改正、厳罰化とネット規制を考える
保坂展人のどこどこ日記:著作権法違反の厳罰化とネット監視社会への危惧
2006年12月9日土曜日
画面デザインにおける意匠権
画面デザインにおける著作権と特許権の続きです。
画面デザインの保護(3)意匠権による保護ではパソコン用ソフトは対象外:ITPro
意匠権とは、工業デザインの保護のための権利と法律です。
結論から言うと、基本的には、情報家電等の画面には適用されるが、ビジネスのPCで使用する画面には適用されないだろう、とのことです。
ちなみに、意匠権は、著作権と異なり、コンテンツそれ自体は保護しません。初期画面等その外面上の形状のみが保護対象です。かつ、登録制となります。
2006年12月8日金曜日
2つのイノベーション:インクリメンタル型とアーキテクチャル型
イノベーションについて。
NBonline 宮田秀明の「経営の設計学」:ダ・ヴィンチの飛行機に足りなかったもの〜“ビジョン”を“コンセプト”に変える難しさ
イノベーションには、インクリメンタル型とアーキテクチャル型という2つのタイプがあるということです。すなわち、継続して改良を積み重ね漸進的な技術革新が起こるインクリメンタル型のイノベーションと、大きな断絶を伴う技術革新であるアーキテクチャル型のイノベーション。
アーキテクチャル型のイノベーションを起こすには、ビジョンを描きそれを具現化するコンセプト(新しい考え方)およびモデルを作らなければいけないが、そこが非常に難しいとされています。
レオナルド・ダ・ヴィンチのような天才でさえ、空を飛ぶというビジョンに対して描いたコンセプトは間違っていた、と。
そうしたイノベーションは、つぎ込んだ研究開発費と成果の相関は著しく低い、また、現場主導ではなくトップダウンのマネジメントでないとうまくいかない、とも指摘されています。
また別の観点から。
池田信夫blog:「ユーザー主導」の落とし穴
クリステンセンも指摘するように、持続的イノベーションが没落するのは、顧客を無視するからではなく、むしろその要求を聞いたために(顧客とともに)没落するのである。グーグルのような破壊的イノベーションは、新しい(今は存在しない)企業によってまったく新しい市場(たとえば検索広告)を作り出すことが多いので、いくら既存企業の話を聞いても生まれてこない。
クリステンセンが『イノベーションのジレンマ』で指摘するように、企業として正しい判断の元企業努力を積み重ねインクリメンタル型のイノベーションを実施していると、いつのまにかアーキテクチャル型のイノベーションによって市場の質(アーキテクチャ)が変わってしまっているということが起こりえます。
破壊的なイノベーションは、実はユーザ主導では生まれないし、企業の地道な努力の積み重ねでは生まれないということです。
では、イノベーションを起こす企業は、アーキテクチャル型のイノベーションを目指せばよいかというとこれが非常に難しい。ほとんど狙ってできるものではありません。たくさんの暗中模索の後にたまたま行き当たるかもしれない、というものなのだそうです。「多産多死」の中から解が現れるのを待つしかない、と。
池田信夫blog:現代は「情報大航海時代」か
いまグーグルが行っているのは、かつて物的資源を財産権で囲い込んで収益を上げる資本主義が発見されたように、情報を囲い込まないで持続可能な経済システムが存在するのかどうかという歴史的な実験である。それが存在するのかどうかはあらかじめわからないし、コロンブスのようにインドだと思ったら新大陸だったということもあるかもしれない。
先の宮田さんの記事によれば、人材育成としては、最初はインクリメンタル型のイノベーションのマネジメントを経験させ、その後にアーキテクチャル型のイノベーションに取り組むという2段階を踏むことが重要だという指摘がありました。
いずれにせよ、宮田さん自身が体験したアーキテクチャル型のイノベーションがほとんど予算無しで実施された研究だったということからも、いろいろな研究や取り組みを試みては失敗するというのを繰り返すしか、アーキテクチャル型のイノベーションは生まれてこないんでしょうね。
しかし、それだけやってたら会社をクビになると思うので、インクリメンタル型のものに取り組みつつ余力で取り組むということになるでしょうか。
2006年12月7日木曜日
著作権は主張すべき、でもどうやって?+著作権法厳罰化の動き
最近の著作権がらみの話。
YouTube「氏名や住所の登録を必須に」--権利団体らが著作権侵害防止策を要請
JASRACや民放連が、YouTubeに対してユーザの個人情報の登録の義務付けや違反したユーザIDの削除、警告文の掲載などを要求したようです。
YouTubeは、デジタルミレニアム著作権法(DMCA)の「Notice & Take Down」には自国の法律なので従うでしょうが(従ってますが)、日本からの要請には従わないでしょうね。法的義務が発生しないので。
それより日本の民放連などは、自身の著作権を確保しつつ、"Creative Commons"を適用するようにという"粋な"要請をYouTubeにしてほしかったですね。その上で著作権上の調整が取れないコンテンツに対しては削除依頼を出せばよいわけです。そうするとYouTubeより一歩先行く戦略をとることもできたかもしれません。まあ、ありえないでしょうが。(YouTubeがCreative Commonsに反している点については「Web2.0に対して深まる分析:Fake Sharing vs Switchboard」)
なにより自身のコンテンツを、視聴者に有料でも何でも自由な時間に見れるような環境整備をするのを怠っているのが問題なのではないでしょうか。
そういう環境が外部にできるとあわてて否定しだしている、とそういう後手後手の対応に見受けられます。
Creative Commonsについては、伊藤穰一さんも"共有経済"という少々過激な概念で語っています。
多才の人、伊藤穰一氏に聞く
GoogleやFlickrが例としてあげられています。
ただ、この手の議論でちょっと気になるのは、GoogleにしろFlickrにしろ、人が作ったものを共有するための仕組み(API他)を提供しているだけです。Google自体は、自身のコンテンツ(=検索アルゴリズムやプログラム)を一切公開していませんし共有もしていません。その上で、その非共有の物を使って広告モデルを適用しきっちり収益を上げているということです。万が一Googleのソースコードが漏えいしたらおそらく著作権も主張してくるでしょう。
これは映像に置き換えて言ってみれば、製作した映像(映っている内容)をいつでも自由に見れるようにします=APIを提供します。でも、撮影技術やノウハウの詰まった映像自体はお渡ししませんし、映像を見るときは広告見せます、というものになるのではないでしょうか?
その意味で、自身のアイディアが詰まった製作物に対して著作権を主張することはなんら間違ったことではありません。ただ、今の映像コンテンツの現状に関して言えば、いつでも自由に見れるような仕組みが用意されていないことは消費者に対する怠慢と映ってもしょうがないかもしれません。
その問題の解決にYouTubeを利用する、というのが今アメリカの著作権管理団体が進めている戦略です。彼らは、自身の著作権は保持したままYouTubeを使って配信し、広告収益は折半する、ということを始めています。(「急速に進展する経済的対価のスキーマと著作権の折り合いの模索」)
話は変わって、上の問題よりももっと困った問題かもしれないことが今進んでいます。
著作権法違反の厳罰化とネット監視社会への危惧
厳罰化するのはいいですが、今の時代に合わない著作権法のまま厳罰化されては、運用する方も法を適用される側も困ってしまいますね。
著作権法を今の時代に適した現実的なものにするという取り組みが必要です。ただし、これについてはアメリカも実現できていないですが。
なお、最初の話題については、別の観点で、「しあわせのくつ」にも取り上げられています。今回YouTubeに要請を出した会社の中にYahoo! Japanも含まれていたようです。Yahoo!Japanの親会社がSoftBankというのも関係しているかもしれませんね。
Yahooがオールドメディアになった日
2006年12月5日火曜日
アイディアが認められるとき
アイディアが認められていく過程について、なんとなく共感できる記事があったので紹介します。
経営者倶楽部:通る企画と、通らない企画
興味深いことに、「アイデアを認めてもらう」「企画を通す」という観点から見ると、両者の取り組みには共通点があった。ごく簡単に書くと、次の二つである。
●徹底的に考え、理屈が通った詳細な提案書を作る
●最後の最後で、場の空気を変える
(略)
しかし、議論を尽くした後は、こんな経緯で成否が決まることが多いのではないか。基本的には直球で押すものの、最後の最後に、とっさの判断で変化球を投げる。それができるかどうかが、アイデアの運命を左右するのだろう。
とくに認めてもらいにくい提案や今までのやり方を変える(否定する)ようなアイディアの場合、論理的に筋が通っているだけでなくて、もうひとひねりないと認められない気がします。
これは、認める側の能力が足りないのではなくて、誰しもが認める側になると陥りやすい一種の罠です。
アイディアを出す側はそのあたりのことまで含めて提案していかないと、せっかくお互いにメリットのある提案が実現されることなく消えていくことにもなりかねません。
また別の記事に、
Processor温故知新:破壊的イノベーションには独裁型リーダーが必要
情報を読み解く総合知”とは,つまるところ,歴史と教養,先見性に基づく情報の読み方になります。そうした総合知を持つ人間だけが,情報を正しく読み解ける。そして,情報に接するとき,注意点がいくつかあります。
1.成功体験を捨てる。
2.先入観を持たずに,情報の読み方を間違えない。
3.判断するときには2つ以上の違った意見を参考にする。
4.情報が100%完全に集まることを期待しない。
という引用がありました。
とくに、1.と2.は、認める側にとって陥りやすい罠となると思います。ただし、1.や2.を否定しているわけでは決してなくて、単にそのときに意識されないだけです。
ですので、アイディアを出す側は、うまく1.と2.を認める側に意識させて、今回の提案は3.の違った意見の1つなんだと認識させ、最後に理屈を通して認めさせるということが必要なのでしょう。そこまで含めて"アイディア作り"なのでしょう。
2006年12月1日金曜日
特許権を棚上げしてもビジネス推進
最近、NovellとMicrosoftが、LinuxとWindowsについて提携したことが話題になっています。
詳しくは、次のニュースが詳しいです。
長年の争いに終止符?MicrosoftとNovellの提携で揺れるLinux業界
要するに、NovellのSUSE LinuxとMicrosoftのWindowsが仮想環境など異種混合環境で使用される際に、互いの特許権を主張しないという相互ラインセンス契約となります。
ただし、互いの特許侵害の認識はけっして合致したわけではなく異なったままです。お互い特許を侵害していると主張したまま、でもビジネス上は協力しましょうという提携になります。
以前、著作権についての権利を棚上げしてのビジネス推進について書いたように(「急速に進展する経済的対価のスキーマと著作権の折り合いの模索」)、ソフトウェアの特許権についても、ひとまず権利上の問題は棚上げしてビジネス上で協力し推進していこうというものが、今回のNovellとMicrosoftの提携となります。
ビジネス至上主義というか、法律や権利上の主張は棚上げしてそれよりもビジネスを進めようというしたたかさです。
ITと法律のスピード感があまりにも違うので、最近の流行として今後もこのような形になっていくんでしょうか。
これを受けて、GPLを改正しようという話もあるようです。
ストールマン氏もこれについて発言しています。
R・ストールマン氏が来日:「MSとノベルの提携はタイミングがよかった」